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書き込み等の削除についての法的構成としては、①人格権に基づく妨害排除・妨害予防請求としての差止請求や、②民法723条の名誉回復措置、③著作権法等格別の法律に基づく差止請求、が考えられます。
このうち、②については、不法行為としての要件が必要になります。したがって、故意過失という主観的要素の立証も必要になり、こちらを選択するメリットはほとんどありません。そのようなことから、実務上は①が選択されることが多いでしょう。差止規定等の法的根拠がある場合には、③が根拠となります。
①の人格権構成による場合の要件としては、人格権の違法な侵害があること、です。
既に述べましたとおり、相手方の書き込み等も表現の自由の保護が及びます。したがって、違法かどうかの判断の中では、相手方の表現の自由との調整が必要になります。ただし、故意過失といった主観的要素の立証は不要です。
違法性の立証については、名誉棄損・プライバシー侵害、肖像権侵害・著作権侵害…といった侵害されたとする権利ごとに立証が必要となります。
削除請求の相手方について、感覚的には、情報を発信した本人と考えるのが普通です。しかし、相手方がそれに従わない場合や、削除したくてもその人には事実上できないという場合もあります。
そこで、実務的には、ウェブサイト管理者やサーバー管理者を相手方とするのが一般的です。ただ、プロバイダー責任制限法3条2項は、プロバイダーが削除を行った場合、発信者に対する損害賠償責任について、原則として免責せず、例外的に免責するという建前をとっています。このような建前になっていますので、プロバイダーとしては、例外要件を満たすような場合でないと削除に応じ難いという事情があるのです。したがって、例外要件が整っていることを請求者の側でしっかりと示すことができるように、準備をしておくことが大変重要になります。
既に述べました通り、ネット上は決して完全な匿名性空間ではありません。ネットを非匿名空間とさせている有力な要素が、この情報発信者特定請求です。
その法的根拠は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条1項です。2001年にこのプロバイダ責任制限法が制定されたことによって、一定の要件を満たした場合に発信者情報の開示を請求できることになりました。これにより、「ネットだから何を書いてもいい」とは決して言えなくなったわけです。
4条1項に定める要件としては以下のものが挙げられます。
1、当該情報の流通によって自己の権利が侵害されたことが明らかであること (明白性)
2、発信者情報の開示を求める正当な理由があること
3、開示を求める情報が発信者情報に該当するものであること
4、特定電気通信による情報の流通によるものであること
5、開示を求める相手方が「開示関係役務提供者」であること
6、「開示役務提供者」が発信者情報を「保有」していること
ここでは、4条1項の要件について、特に重要な部分について解説します。
1 上記要件1について
総務省解説によれば、「明らか」とは、権利侵害がなされたことが明白であるという趣旨であり、不法行為等の成立を阻却する自由の存在をうかがわせるような事情の存在しないことまでを意味する、とされています。
しかし、不法行為の成立を阻却する…とまでしてしまうと、故意過失等の主観的要素の不存在をまでも開示請求者の側で立証することになってしまうという不都合があり、批判されているところです。したがって、「明らか」とは、違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことを意味する、とすべきとされており、同様の裁判例もあります(東京地判平成15年3月31日)。
2 上記要件2について
この要件は、要するに面白半分で情報を取得したいだけというような請求を除外する役目を果たします。具体的には、損害賠償のため、削除請求のためという理由が該当することになります。
3 上記要件6について
この要件は、保有という言葉とはかなりかけ離れたものです。ここでいう「保有」とは、開示関係役務提供者が開示する権限を有するという意味と考えるのが一般的です。すなわち、第三者に委託して情報管理を行っていても、開示を行う権限があるならば、この要件に該当することになります。
総務省令によれば、開示請求できる発信者情報は、
1、発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
2、発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
3、発信者のメールアドレス
4、侵害情報に係るIPアドレス
5、4のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から開示関係役務提供者 の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻
となっています。相手方の口座番号やその他の私的事項についてまで開示請求できるというわけではありません。
開示請求をすることで、発信者を特定することができます。しかし、発信者を特定するためには、①発信に使用されたIPアドレスの記録、②そのIPアドレスが使われていた時間等の記録、が必要です。これらは、それぞれ保有している主体が異なり、①についてはサーバー管理者等、②についてはプロバイダーが管理しています。したがって、いずれに対しても請求する必要があります。
IPアドレスは、コンピューターごとに、永続的・固定的に割り当てられるわけではありません。IPアドレスは、接続するたびに割り当てられるものなのです。ですから、IPアドレスが分かっただけではほとんど意味はなく、そのIPアドレスが使われていた時間等の様々な情報とを照合することによって、特定することができる、というわけです。
削除請求・発信者情報開示請求のいずれにも共通することですが、サーバー管理権限を有している者を相手とするわけですから、請求する側としては、まずその特定が必要となります。
特定方法としては、特別なことはなく、サイトのページ内のどこかに記載されていることもあります。それでも判明しなければ、whois検索という手法を用いることになります。「whois検索」というワードで検索すると、whois検索が可能なサイトが見つかります。具体的には、ドメイン情報やIPアドレス管理情報等が判明します。
サーバー管理権者へのIPアドレス等開示要請 | 上述のwhois検索等を用いてサーバー管理権者を特定します。その上で、管理権者に対し、IPアドレス等の情報の開示を求める。任意の開示が難しければ、裁判所に対し仮処分を申し立てる。 |
アクセスプロバイダーへの情報(住所・氏名等)開示要請 | 再度、whois検索を用いて、IPアドレスについて検索を行い、プロバイダーを特定する。その上で、規定の書式を用いて任意の開示を求めるか、裁判を行う。ただし、プロバイダーにも通信の秘密があるので、任意の開示についてはそう簡単ではない。★この段階で忘れてはいけないのは、アクセスログの保存要請。アクセスログの保存期間はかなり短いので、早急に行う必要がある。 |
損害賠償、刑事告訴等 | 発信者を特定できた場合には、損害賠償請求訴訟や刑事告訴を行うことになる。 |