平成の時代になりますと、当時近鉄バッファローズで大活躍した野茂英雄選手を皮切りに、日本人プロ野球選手が次々とメジャーリーグに移籍（あえて「挑戦」とは言いません。）していきました。我々は、野茂選手をはじめ、松井秀喜選手やイチロー選手、ダルビッシュ選手等々が第一線で活躍する姿に心底胸躍らされました。

彼ら日本の超一流選手も活躍するアメリカのメジャーリーグでは、選手のギャラに関する交渉は代理人が行うのがまったくもって当然といえる世界です。それはなぜかといえば、選手は野球のプロではあるものの、交渉のプロではないからです。

もっといいますと、選手というのは情報をそれほど取得できるわけではありません。契約も守秘義務が課されることも多く、具体的な情報が流れてくることはそうそう多くはありません。

我々がニュースで知るのは超一流の選手です。その商品価値は誰でもわかります。しかし、その他大多数の選手については、自分の商品価値を正確に把握するのは実はかなり難しいことだと聞きます。

そうしたことから、その道のプロである代理人が活躍し、選手の評価として適正といえる金額が得られる仕組みができあがっているのです。なお、メジャーにおける代理人の報酬は年棒の５％が多いといわれています。

日本のプロ野球においても、実はかなりシビアな年棒交渉が行われているようです。しかしながら、代理人が交渉するということはまだまだかなり少数です。交渉の代理人資格が弁護士に限定されていることも一つの要因かもしれませんが、何よりギャラについて主張しているような印象を与えてしまうことを選手が嫌うというのもあるように思います。

日本のプロ野球におけるカリスマといえば王・長嶋ですが、両選手とも年棒には無頓着だったといわれています。ある関係者に聞いたところ、その影響は空気としてあると思う、とのことでした。

しかし、年棒交渉は単にお金が自分のところに多く欲しいという意味合いも含まざるを得ないのは事実ですが、他方でもっと大事なのは、自分の商品価値がそれで決まってしまうということなのです。選手の力というのは一朝一夕に出来上がったものではなく、長い長い鍛錬の道のりを経て後、ようやく練りあがるものだと思います。その評価というのは結局のところ、年棒という形で結実してしまうところがあります。

正当な評価を勝ち取るという意味でも、年棒交渉については決して疎かにしてはいけないのです。